Uさんのケース
Uさん(76歳、男性、患者家族)2026年8月22日投稿
【不意の昏倒から確定診断まで】
2017年9月の日曜日の朝、本八幡の映画館へ向かって2人で歩いている途中、妻が突然転倒した。普通、躓いて転んだりすれば、手や膝を地面に着くはずが、頭を打っていたことが不審がられた。翌日、勤務先大学の附属病院脳神経内科の医師で友人のS先生に連絡して検査をお願いした。検査後すぐS先生から呼び出され、「頭部打撲による影響はまったく有りませんでしたのでご安心ください。ただ、一つ気になることが有ります。奥様は年齢から考えると少し脳の萎縮が進んでいます。そういう所見に合致する病気は思い当たりませんが、念のため半年に1回くらい経過を観察したいと考えます」とのこと。これが全ての発端であった。
翌2018年、さらに2019年と、半年に1回、外来で経過を診てもらっていたが、2019年も押し詰まる頃にS先生から呼びだされ、「奥様の症状とかなり符合する病気について最近報告があり、この病気であるかどうかの確定診断を試みたいので検査入院をお願いしたいです」と言われた。翌2020年正月三箇日明けに、検査入院して皮膚生検の組織染色でポリユビキチンとp62陽性の封入体が確認されてNIIDと判明した。ちなみにS先生が言及された“最近の報告”が、愛知医科大学の曽根先生グループと東大脳神経内科のグループが並列してNature Geneticsに上梓したNIIDの遺伝子解析の論文である。S先生の同僚で曽根先生が確立された皮膚生検の組織染色による診断法を速やかに導入した人が居たと後で分かった。
【症状の進行と現在の生活】
2020年から翌21年、妻は目立った健康上の問題は無く過ごせていたが、2022年9月に、朝外出して京成電鉄の駅改札を通る際に昏倒し、近くの病院に救急搬送された。病院からの連絡を受けてすぐ駆けつけると、妻は何事も無かったようにベッドに横になっていた。会話にも問題は無かった。救急担当医に面会し、これまでの病歴を説明して、搬送されたときの検査データをもらい、妻を自宅へ連れ帰った。翌日S先生に連絡を取って外来で診察をしていただいた。「昏倒の原因は脳の痙攣による失神に違いないので、抗てんかん薬で防ぐことが出来ると思います」ということで、抗てんかん薬のイーケプラを服用することになった。以来、失神して昏倒する発作は完全に抑えられたが、救急搬送後に日時と曜日が分からなくなるという症状が現れた。カレンダーを見て今日が何月何日かが分からない。私が日付を指さして曜日は何?と訊けばやっと理解できるが、今日は火曜日だね。何日?と訊いても正しい日日を答えることが出来ない。カレンダーの日時や曜日が頭に入って来ないと言い張るばかりで今に至っている。NIIDの顕著な症状の一つは四肢の筋力低下である。そこで2023年4月から自宅近くの神経内科医院で毎週木曜日午前中に理学療法士による1時間程度のリハビリを受けている。しかし、緩やかな下り坂を降りるような感じで歩行困難が進み、現在自宅の中では何とか自力で歩いて生活しているが、外出は私が車椅子に乗せて出かけなければならない。加えて去年夏を過ぎる頃から便の失禁を繰り返すようになった。紙パンツの着用が必須で、起床時と就寝時の着替えは私が介助しないと自力ではできず、三度の食事も私が全て面倒を見ている状態。今年3歳になった孫娘のレベルと変わらない。何とかこれ以上症状が進まないようにと願うばかりである。NIIDは治療法が確立されていない。最近、近畿大学脳神経内科永井義隆教授が培養細胞やマウスを使ってトリプレットリピート病モデルでアルギニンが緩和作用を持つという論文を発表していることに注目し、大谷翔平とコーワの共同開発と謳い文句のシンクロンコーワ・アクティブモードを毎朝1包ずつ飲ませている。アルギニン1.5グラムを含んでいることに淡い期待をかけている。
