NIIDとは
NIIDとはどんな病気?
NIID:Neuronal intranuclear inclusion disease(神経核内封入体病)は、大脳や脊髄、末梢神経といった神経組織の細胞や一般臓器の細胞の中にある「細胞核」の中に「封入体」※1と呼ばれる異物の存在が認められる難病です(図1)。物忘れや手足の力が弱くなるなど、さまざまな症状が出現することが報告されている病気です。
2011年に皮膚を検査することによって診断ができるようになり(図3)、多くの方がNIIDと診断されるようになりましたが、それ以前には診断することが非常に難しかったため、NIIDに関してはいまだに未解明の部分が多く残されており、病態の解明および治療法の開発に向けた本格的な研究はようやく始まったところといった状況です。
※1封入体:タンパク質などが集まって形成された沈着物。
- 図1:NIIDの組織所見
NIIDによくある症状
物忘れなどの高次脳機能障害や、手足の筋力が低下したり感覚が低下するといった末梢神経の障害が見られます。また、手足の細かな動きの調節に障害が出る失調といった症状や、膀胱機能障害、パーキンソン病に似た振戦、筋固縮などの症状が見られたとする場合もあります。さらに、頭痛、発熱に加えて意識障害が出現するといった、急性脳炎の様な症状が出現し、緊急に入院となる方も見られます。
NIID発病の原因
JaNIIDSの研究の結果、NIIDの原因の一つとして、NOTCH2NLCという遺伝子に異常があることが2019年に明らかになりました。NOTCH2NLC遺伝子の中に、GGC(Guanine(グアニン)-Guanine(グアニン)-Cytosine(シトシン))という核酸の配列が繰り返す部分がありますが、NIIDの患者さんでは、この配列の繰り返し回数が大きく延長していることが原因であると明らかになりました。しかし、欧米のNIIDの研究の結果、NOTCH2NLC遺伝子のGGC配列の繰り返しが延長していないNIIDの方もいる、との報告もされていますので、未だ解明されていないNIIDの原因があると推察されます。
NIID治療方法は?
現時点では、根本的な治療法はありません。ですが、お薬で症状をある程度抑えることは可能です。
NIIDの検査方法は?
画像診断
NIIDの患者さんでは、特に物忘れの症状のある方では、脳のMRIを撮影すると、白質脳症(図2の様にMRI T2画像で脳の深部が白く写ること)が認められ、拡散強調画像(DWI)という特殊な条件で撮影すると、線状の高信号が認められることがあります(図2)。
- 図2:NIIDの頭部MRI所見
皮膚生検
足の皮膚を少しだけ採取し、顕微鏡で観察します。皮膚線維芽細胞、汗腺細胞、脂肪細胞の細胞核の中に封入体が認められます(図3)。
- 図3:NIIDの皮膚生検所見
遺伝子検査
血液からDNAを抽出し、NOTCH2NLC遺伝子のGGC繰り返し配列の延長があるか否かを調べます。