NIIDとは
NIIDとはどんな病気?
NIID:Neuronal intranuclear inclusion disease(神経核内封入体病)は、大脳や脊髄、末梢神経といった神経組織の細胞や、一般臓器の細胞の中にある「細胞核」の中に「封入体」※1と呼ばれる異物の存在が認められる難病です(図1)。物忘れや手足の力が弱くなるなど、さまざまな症状が出現することが報告されている病気です。
2011年に皮膚を検査することによって診断ができるようになり(図3)、多くの方がNIIDと診断されるようになりました。1963年にはNIIDの存在については発表がされていたものの、診断することが非常に難しかったため、NIIDには未解明の部分が多く残された状況が長く続いており、病態の解明および治療法の開発に向けた本格的な研究は始まったばかりです。
2019年には、私たちの遺伝学的研究の結果、NOTCH2NLCという遺伝子に異常があることが明らかになりました。NOTCH2NLC遺伝子の中に、GGC(Guanine(グアニン)-Guanine(グアニン)-Cytosine(シトシン))という核酸の配列が繰り返す部分がありますが、我が国の大半のNIIDの患者さんでは、この配列の繰り返し回数が大きく延長していることが原因であると明らかになりました。しかし、それまで欧米でNIIDであると診断されていた患者さんの中には、NOTCH2NLC遺伝子のGGC配列の繰り返しが延長していない方もいる、との報告もされており、未だ解明されていないNIIDの原因があると推察されます。また、症状や筋肉の検査の結果から、OPDM(Oculopharyngodistal myopathy:眼咽頭遠位型ミオパチー)と臨床診断されていた患者さんの中にも、遺伝子検査の結果、NOTCH2NLC遺伝子のGGC配列の繰り返し配列が延長していることが確認された方も報告されています。OPDMは本来、筋肉にしか症状および病変が出現しない疾患と定義されてるのですが、これらの患者さんではNIIDと同様に、皮膚組織で核内封入体が出現していたり、大脳のMRI検査で異常が指摘されており、最終診断はOPDMではなくNIIDであると考えられます。
さらに、LRP12、GICP1、RILPL1などの他の遺伝子上でGGCの繰り返し配列が延長していると報告された患者さんでも、NIIDに極めて類似の症状および病理所見が報告されていおるものもあり、これらの病態と、NIIDの病態との関連について、現在も研究が進められています。
※1封入体:タンパク質などが集まって形成された沈着物。
- 図1:NIIDの組織所見

NIIDによくみられる症状
NIIDによくみられる症状については、現在も研究が進んでいます。主な症状についてはグラフで示していますが、これらの症状が様々な組み合わせで現れます。
大きく分けると4つの群(パターン)に分けられます。
- 物忘れで発症する群
- 筋力低下で発症する群
- 脳炎様の症状で発症する群
- その他の群
1.物忘れ群
我が国で最も多く報告されているのは、物忘れなどの高次脳機能障害が現れる物忘れ群です。60歳ごろから、物忘れ、尿失禁(膀胱機能障害)、歩行時のふらつき(失調)などが現れます。
2. 筋力低下群
筋力低下で発症する群は、およそ20歳〜30歳ごろに、おもに両足の筋力低下で発症し、非常にゆっくり筋力低下が進行します。やがて両腕、顔面の筋力が弱くなる場合もあります。末梢神経の障害が認められますので、感覚障害を伴う場合もあります。末梢神経伝導検査で異常が見つかる場合が多く、末梢神経障害と診断されている方もみえます。また、筋肉が萎縮するため、NIIDの存在が広く知られ以前には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、脊髄性筋萎縮症(SMA)、眼咽頭遠位型ミオパチー(OPDM)と診断されている方もみえます。
3. 脳炎様症状群
神経核内封入体病では、頭痛、発熱に加え意識障害が出現するといった、急性脳炎の様な症状が出現することがあります。この脳炎様の症状が初発症状である方が見えます。急性脳炎が疑われ、緊急入院となって様々な検査の結果、細菌感染やウイルス感染といった原因が見つからず、原因不明の脳炎と診断されている場合が見られます。
4. その他の群
神経核内封入体病では、上記の症状以外にも表に示す様な様々な症状が見られます。そのうち、振戦や視力障害がかなり早い時期から出現していたとする報告があります。また、最近では、呼吸困難や咳が出だすと止まらないといった、気管支喘息の症状を伴う方が一定数みえると報告されています。これらの症状以外にも、神経核内封入体病では様々な症状が報告されており、引き続き研究を進めています。
- グラフ:NIIDによくみられる症状(日本神経核内封入体病研究グループ集計データより)

NIID治療方法は?
現時点では、根本的な治療法はありません。ですが、お薬で症状をある程度抑えることは可能です。
NIIDの検査方法は?
画像診断
NIIDの患者さんでは、特に物忘れの症状のある方では、脳のMRIを撮影すると、白質脳症(図2の様にMRI T2画像で脳の深部が白く写ること)が認められ、拡散強調画像(DWI)という特殊な条件で撮影すると、線状の高信号が認められることがあります(図2)。
- 図2:NIIDの頭部MRI所見

皮膚生検
足の皮膚を少しだけ採取し、顕微鏡で観察します。皮膚線維芽細胞、汗腺細胞、脂肪細胞の細胞核の中に封入体が認められます(図3)。
- 図3:NIIDの皮膚生検所見

遺伝子検査
血液からDNAを抽出し、NOTCH2NLC遺伝子などのGGC繰り返し配列の延長があるか否かを中心に調べます。
